よろこびのうた について
あらすじと結末までをくわしくネタバレして感想を紹介します!


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よろこびのうた 1話をくわしくネタバレ

「煙と水」

2006年3月


老々介護の末の焼身自殺か!?
というニュースが流れる。


死亡したのは二人の老夫婦で
青木真、青木和子だった。


30年は使用されていない火葬場の中から遺体は発見された。


火葬場脇に乗り捨てられた車からは
クラシック音楽が大音量で流されていて、
不審に思った近隣住民が通報したのだった。


近隣住民はインタビューで
“仲のいい夫婦だったので困惑している”
など大方の想像通りのコメントをしている。


発見された遺言書には
残された財産は市と寺に寄付するという内容が記されていた。


ネットもこの話題で盛り上がっている。


限界集落での心中ということで
専門家らしき人もテレビでコメントしている。





半年後
新聞記者の順一は新宿で起きた事故の取材に行く。


車で標識に追突した後もアクセルを踏み続けたたため、
アスファルトの地面はえぐれてタイヤ痕もしっかりとついていた。


その様子が印象的だったと上司に報告する。


上司は“介護特集”ということで
順一に半年前に起こった老夫婦の焼身心中について現地で調べることになる。


順一は婚約者に2~3日出張すると告げる。


式が近いため婚約者は順一を責めるが
“がんばって”
と励ましもする。


順一は現地入りして警察署に向かう。


しかし
事件が話題になりすぎたため情報開示ができないと言われてしまう。


仕方なく近隣住民に話を聞くことにする。


順一は付近の板金屋に行く。


事件のことを聞こうとすると
主人の金蔵は怒って順一を追い出す。


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よろこびのうた 2話をくわしくネタバレ

「水と車」

他の近所の住民の太一や
雑貨店経営の好男は順一の質問に丁寧に応える。


真新しい情報は無いが
妻の和子が認知症を患っていたという情報は確認できた。


雑貨店の駐車場で
順一は見覚えのあるタイヤ痕を見つける。


たまたま通りかかった下校中の小学生の幸太郎に青木夫妻のことを尋ねようとするが、
幸太郎は動揺して走って逃げてしまう。


順一は青木夫妻のデイサービス担当者に話を聞く。


和子の認知症の症状が進むにつれて
だんだん呼ばれなくなったという。


介護用に車イスに対応した車に乗り換えたのも、
呼ばれる必要がなくなった要因ではないかという。


順一は
夫妻が車を買い替えてデイサービスに頼らなくなったのが7月で
その二か月後には遺言書で翌年には心中という時系列を知る。


“展開が早すぎないか?”
と不審に思う順一。


雑貨店の駐車場のタイヤ痕と幸太郎の狼狽え方も気になる。


タイヤ痕の付き方は出張前の事故とよく似ていた。


上司に電話して
“新宿での事故のタイヤ痕はどのくらいの期間残るのか?”
と聞くと
交通量にもよるが、
交通量が少なければ一年くらいは残ると言われる。


雑貨店の駐車場のタイヤ痕はここ一年以内のものだということになる。


順一は警察署に電話をかけて何かを確認する。


二日後に再度
板金屋を訪れる。



よろこびのうた 3話をくわしくネタバレ

「車と縄」

順一は金蔵が出てくるとすぐに
“車の件で伺った”
と告げる。


金蔵は
“車の件”
ということが気になり順一から話を聞くことにする。


順一の要件は
“金蔵が廃車手続きを行った青木夫妻の車の件について”
だった。


順一は青木夫妻の車の買い替えで
気になる点があることを説明する。


さらに
雑貨屋の駐車場のタイヤ痕との関連性を指摘する。


加えて
“ひとり捜索願が出ている”
ことを警察で確認したということを告げる。


金蔵は
“便所だ”
といって一度席を外す。


金蔵はビールをもって戻ってくる。


“酒でもないと話せんこともある”
というので
一緒にビールを飲むことになる。


順一は気が付くとロープで身体を拘束されていた。


金蔵の外に
順一が話を聞いて回った太一と好男もいる。


順一が困惑していると
太一が
“少し長い話になる”
と青木夫妻と自分たちに何があったかを話し始める。



よろこびのうた 4話をくわしくネタバレ

「老老介護」

2005年6月


青木真は妻の和子の介護をしていた。


和子は足腰が悪く、歩行器を必要としていた。


子供はいないが夫婦仲はよく
二人で一緒に出掛けたりしている。


真が寺に行くというと和子もついていくという。


朝のゴミ出しのときに
真は近所の太一と軽い挨拶をかわす。


太一は近所の小学生の幸太郎の身を案じる。


幸太郎はやせ細っていて服も汚かった。


父親の赤星周一郎の人間性にも問題があるのは周知の事実だった。





和子は寺で地獄絵図を眺めるのが好きだった。


真が用事をしている間は
和子はずっと絵を眺めている。





幸太郎は家では父の周一郎に怯えていた。


周一郎は競馬の予想に夢中え幸太郎にご飯を与えていなかった。





金蔵は本業の外にも裏の仕事があった。


ヤクザとの付き合いがあり
ヤクザから依頼された壊れた車の修理を秘密裏に行っていた。


都合の悪い壊れた部品は
産業廃棄物として溶かした後にヤクザが回収して処分していた。


ヤクザと金蔵は持ちつ持たれつな信頼関係を築いていた。



よろこびのうた 5話をくわしくネタバレ

「限界集落」

真は畑仕事に精を出していた。


軽トラックの荷台から和子は真を見守っている。


米つくりは休んでも
“死んだときに先祖に合わせる顔がない”
と田んぼの手入れは欠かしていなかった。


真はデイサービスに和子を預けて夜の集会に行く。


集会には真、金蔵、好男、太一が来ていた。


和子の様子を尋ねられると
真は和子は去年の夏で記憶が止まり
前日のことは覚えていないという。


周一郎も呼ばれていたが居留守を使い集会には来ていない。


“限界集落はつらい”
と年より同士で談笑する。


真が家に帰ると
入れ替わりでデイサービスの鈴木も帰る。


和子の認知症が進んでいるため
デイサービスの鈴木を忘れてしまい
“知らない人がいるのは苦手”
という。



よろこびのうた 6話をくわしくネタバレ

「虐待」

周一郎は好男の雑貨屋に酒を買いに来ていた。


好男に酒の値段が高いと言って値切ろうとするが
金蔵が入店したのを見て慌てて酒を買って帰る。


金蔵は子育てをちゃんとしない周一郎の愚痴を好をに漏らす。


真が和子と共に車で来店する。


和子は車の中で待機している。


店内で三人は世間話をする。





周一郎は店の付近で息子の幸太郎を発見する。


雨の中で酒を買いにくことになったのを
幸太郎が早く帰らなかったせいだと難癖をつけて暴力を振るう。


その様子を車中で和子は怯えながら見ている。


周一郎は和子に気付くが
和子の認知症を知っていたため威嚇して幸太郎への暴行を続ける。


和子は幸太郎を助けるため
車を急発進させて周一郎に突撃する。


周一郎は車と壁に挟まれる形になり死亡する。


大きな音がしたため
店の中にいた三人は慌てて外に出る。


金蔵は周一郎が既に死亡していることを確認する。


幸太郎は呆然としながらも
“ありがとうございます…”
と泣きながら何度もつぶやく。


好男が警察と救急車を呼ぼうとするが
真が
“待ってくれんか…”
という。


好男は困った表情で金蔵に
“どうしよう?”
というが
金蔵も
“どうって言われてもなぁ…”
という。



よろこびのうた 7話をくわしくネタバレ

「裏家業」

一同は真の家に集まって話し合う。


和子は自室で眠っている。


幸太郎は居間で好男の隣で眠っている。


金蔵は太一と共に事故の一時的な隠蔽をする。


真は集まっている皆に申し訳ないと謝る。


真は
“自分のしたことにできないか”
というが金蔵は無理だという。


幸太郎は目を覚ますと
“周一郎殺害には感謝していて口裏合わせには協力する”
という。


金蔵は
“周一郎を溶かす”
ことを提案する。


板金屋の周一郎の店には硫酸が常備してあり、
時間はかかるが完全に溶けるという。


周一郎を溶かしたドラム缶ごと
産廃として処分すれば
“絶対にばれない”
という。


好男と太一は
“産廃で大丈夫か?”
と心配するが
金蔵は
“今回が初めてではない”
という。


ヤクザとの裏家業で死体を溶かすのは二回目だという。


ヤクザが回収に来る産廃に
紛れ込ませれば絶対にばれないと念を押す。


最終決断は真に委ねると
真は無言で首を縦に振る。


真、金蔵、好男、太一の四人はマスクをつける。


真が硫酸を注ぎ込んでいる間
“南無阿弥陀仏”
と何回も念仏を唱える。





幸太郎は寺で預かってもらうことにする。


寺の娘の鈴子はDVと虐待が原因で旦那と離婚していた。


幸太郎の虐待を知ったため快く受け入れる。





和子が目を覚ますと真は普段通りに接する。


真は和子の様子を見て昨日のことを覚えていないと思い、
金蔵たちに報告に行く。


一同は安心する。


“あとは何事も起きないように祈るのみ”
となる。



よろこびのうた 8話をくわしくネタバレ

「地獄絵」

事件から一カ月後


金蔵は産廃の処理をヤクザに頼む。


特に怪しまれなかったので金蔵は安心する。


順調に思えていたが
和子は夜中にうなされるようになる。


真は和子の様子に気付いたが
好男たちには
“大丈夫 変わりはない”
と言っていた。





寺で和子が地獄絵図を眺めていると
幸太郎が和子に
“助けてくれてありがとうございます”
とお礼をいう。


幸太郎は
“覚えていないかもしれないけど”
と付け加えるが
和子は
“あんなことに感謝してはいけない”
とこたえる。


和子は

“君はきっといつか私を恨む”

“でもその頃にはもう私はいない”

“私みたいなボケたおばさんと一緒にいてはいけない”

という。


そのやり取りを真は部屋の外で聞いていた。



よろこびのうた 9話をくわしくネタバレ

「記憶」

真は和子が“あの日”のことを覚えていると知る。


真は和子が自殺する心配をする。






真は若いころの父との会話を思い出す。


真の祖父を焼却場で燃やしているときのことだった。


父は
この土地で生まれえた人間は田んぼの真ん中で焼くのが習わしだという。


父もそうでありたいといい
真もそうだと父はいう。


真はその時はその意味はわからなかった。


年を取ってから父の言葉が身に染みる。





真は和子に
“周一郎の件覚えているだろ?”
と切り出す。


和子は真を案じて覚えてい無いフリをするが
真は幸太郎とのやり取りを見ていたという。


和子はハッキリではないが覚えているという。


真は自分が高血圧が進んでいることを告げる。


和子は自分が死んでも真は死ぬのはダメだと狼狽する。


真は落ち着いた様子で
“一緒に死んでくれないか?”
と持ち掛ける。


和子は
“ええよ”
と即答する。


真は死に方は既に決めてあるという。


二人は身辺整理を始める。


二人の財産は幸太郎のいる寺におくることにする。


真は
“決行日は二人の結婚記念日にする”
というと
和子は笑って
“男って生きもんは
 ほんとにロマンチックやなぁ”
という。



よろこびのうた 10話をくわしくネタバレ(結末)

「焼身」

決行日に
真と和子は和子の希望で天ぷらそばを昼食に食べる。


晩御飯は自分たちの田んぼでとれた米で作ったおにぎりにする。


最後の晩餐を
二人は“贅沢だ”という。


真は焼却場に荼毘と薪の準備をする。


和子は車の中で待っている。


準備が整うと
二人は焼却場の真ん中で手を繋いで向かい合って横たわる。


真は苦しまないように睡眠薬を和子に飲ませたかったが
和子は

“あんただけ苦しい思いさせるんは嫌”

“ラク過ぎても死んだ後に周一郎に合わせる顔がない”

という。


真は

“少しうれしい”

“夫婦そろってこの土地に還れる”

“これ以上のことは無いようにも思える”

といってライターで火をつける。


二人の遺骨は奇麗に向き合ったままだった。






順一は話を聞き終わると
“聞いたことを記事にしない”
という約束をして拘束を解かれる。


青木夫妻のことを想い
“これはこれで
 幸せな最期だったのかもしれないな…”
と感じる。


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よろこびのうた の感想

誰も不幸にならずに全てが奇麗に落ち着きましたね。


和子は幸太郎に
“いつか私を恨む”
と言ってはいますが
もしも周一郎が生きていたら暴力を振るい
“いつか”
は幸太郎に訪れなかったかもしれません。


もしくは
幸太郎が周一郎を殺していた可能性もあります。


児童養護施設に相談という手もありますが
子供の少ない限界集落では機能していないのかもしれません。


“周一郎を殺す”
ことでしか幸太郎を救うことはできなかったと思います。





限界集落だからだと思いますが
老人同士の仲間意識がとてもいいですね。


青木夫妻を庇うために協力しています。


田舎の板金屋というのが
ヤバい仕事を請け負っているというのはかなりリアリティがあります。


確かに田舎なら人の眼が少ないし、
仮に目撃されても仲間意識の高さで通報の危険も少ないです。


都会は基本的に他人に無関心だからこそ即効で通報しますよね。


限界集落だからこその完全犯罪にワクワクしつつも恐れを感じました。





“幸せな最期とは?”
という所で意見が別れそうです。


私は順一が言う通り
青木夫妻は幸せな最期を迎えたと思っています。


和子は人を一人殺してはいますが
周一郎はどうしようもない人間のクズです。


和子が殺さなかったら幸太郎が殺すか、
もしくは大人になった幸太郎に見捨てられ孤独死していたでしょう。


どちらにせよロクな死に方はしませんね。


幸太郎の虐待はほぼ間違いなく
他の住民も気付いていたと思います。


気付いていて見て見ぬフリをしていた他の住人より
“自分立出来ることをした和子”
を私は支持したいです。


和子の認知症が進むと
真の介護の負担が大変になっていたはずです。


和子の意識がまだはっきりしている内に
二人同意のもと心中を図るという最期は決して不本意なものではないハズです。


心中していなかったら
子供がいない二人は
“孤独死からの発見は数か月後でした”
的な最期だったでしょうね…


一人に少年を救い
最期は奇麗な形で骨となった二人は幸せな最期だったと思います。


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